医療の現場から

Vol.11 はしかと風しんの混合ワクチン接種

はしか、風しんに対する予防接種は、用い方を工夫すると病気の発生数、重症化を激減させることが外国の例より明らかとなり、日本でも改善して欲しい旨、小児科医会も国に働きかけてきました。こうした動きもあって、平成18年4月1日より新しくMRワクチン(はしかと風しんの混合生ワクチン)が導入されます。これは就学前までに2回接種を行うもので、諸外国並みの病気の制圧を目指すものです。それには高い接種率が不可欠です。

例を挙げると、人口3億のアメリカ合衆国では、はしか・風しん・おたふく混合のMMRワクチン2回接種を義務付けています。入園や入学に際して、大学生であっても接種済みの証明を必要とする制度を導入していますので、結果として高い接種率が達成され、はしかの年間発生は150例ぐらい、死亡はほぼゼロと驚異的成果を上げています。1回接種法の日本では、人口1億ではしかの年間発生は1万件以上、はしかによる死亡ですら100例近くみられますから、その違いは明らかです。実はアメリカでのはしか発生の大部分が、このときアジア諸国からの持ち込みによると批判されたのでした。これからのMRワクチン2回接種法は、より強い免疫を期待できますので、ぜひ、皆さん進んで接種し、高い接種率を達成して欲しいものです。

いまのところ、対象者は平成18年4月1日に2歳を迎えていない1歳以上のお子さんからです。はしかや風しんのワクチンを単独で1回受けた方は、MRワクチン接種の対象外です。しかしながら、安全性が追加確認されれば、単独で1回接種した方にもMRワクチン2回目を接種可能となることが期待されていますので、慌てずに接種できるものから済ませておかれるようお勧めします。国には、小学校入学前のMRワクチン2回目を受けられない幼児がなくなるような配慮を期待したいものです。

(文 / 徳重愛二郎)

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