医療の現場から

Vol.15 血管の検診を受けよう!

「人は動脈とともに老いる」と、ウィリアム・オスラーは言っています。皆さんは、自分の血管の年齢をご存知でしょうか。

現在では、血管年齢は5分程度で、ほとんど痛みなく簡単に測定できます。測定方法は、両上腕・両足首の血圧を同時に測り、数値化するというものです。では、血管の硬さ、血管の詰まり具合はどうして分かるのでしょうか。血管の硬さは脈派伝播速度(PWV)で分かります。これは、心臓から押し出された血液により生じた拍動が、血管を通じて手や足に届くまでの速度で、血管が硬い程、その速度は速くなります。

血管の詰まり具合は、上腕と足首の血圧比(ABI)を測定することで血管の狭窄の程度が分かります。健常な人の場合、足首の血圧は上腕の血圧より高いのが普通ですが、足の動脈が脂質等で詰まったりすると血流が悪くなり、上腕の血圧より低くなり、この値が低くなります。0,9以下の場合、下肢閉塞性動脈硬化症の疑いがあり、さらに下肢のMRA(MRIを用いて撮影した血管の画像)の検査がすすめられます。さて、動脈硬化を放置しておくと脳では脳出血(くも膜下出血)、脳梗塞、心臓では狭心症、心筋梗塞、全身への障害として閉塞性動脈硬化症(ひどくなると、足先が腐る脱疸)につながる可能性があります。

ぜひ、40歳以上の方で高血圧、血清脂質(コレステロール、中性脂肪等)の異常、糖尿病、肥満、四肢の冷感、しびれ感などにお気付きの方、また、喫煙、アルコール過剰摂取の長い人は気軽に検査を受けてみたらよいかと思います。そして、動脈年齢の高い人は、原因疾患の加療および体重コントロール、禁煙等に心掛けて動脈年齢を若返らせ、健康な毎日を送ってほしいと思います。

(文 / 小嶋心一)

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