医療の現場から

Vol.03 「麻疹」を撲滅するのだ!!

最近、我が国はアメリカから「麻疹」の輸出国との非難を受ける事がありました。確かにアメリカ、カナダ、イギリス等は、「麻疹」患者発生者数も死亡者数も著しく少なく、平成13年度では、アメリカ、イギリス共「麻疹」による死亡者は2名と「麻疹排除期」に達していると考えられます。一方我が国は、まだ「麻疹」患者の発生や死亡の減少を目指す制圧期の段階です。

「麻疹」は一般には「はしか」と言われている急性熱性発疹症の感染症で、感染力が極めて強く、罹患した場合には特異的治療法は無く、対処的な治療を施すしかありません。現在でも、全世界で年間85,000人の死亡者が発生し、我が国でも数十名の死亡者が報告されています。この数を見れば、先頃世界中の注目をあびた「SARS」に比べても、事の重大性がわかるというものです。しかし、SARSと決定的に異なるのはワクチンの存在で、その予防効果は95%以上と考えられている点です。罹患すれば重大感染症で死亡も有り得る病気が、ワクチンによる予防効果が絶大であるならば、これを予防しない手はないと思います。

平成14年度の流山市における麻疹予防接種の実施率は、近隣と比べるとかなり低水準と見受けられます。柏市96.4%、我孫子市100%、沼南町97.7%に対し、流山市は79.6%に留まり、更に悪い事には、最も罹患しやすく死亡率の高い1歳から2歳までの子の接種率は実に73%足らずで、4人に1人は未接種です。

ある医師は言っております。「麻疹はワクチン接種により撲滅すべきという合意が、行政、医療側、国民の間で全くできていない」と。皆がなんとなく聞いた事の有る、古くからの病気のひとつで、周りで何人かの患者が認められるのも致し方の無い事なのでしょうか。又、「麻疹」で死亡者が出ても報道もされず、国民も、行政も、医療関係者さえこんなに数が多いとは思っていない。これが現状です。「麻疹」は撲滅できるのだ!!「1歳半までに、必ず済ませる麻疹のワクチン」。なんとかこの運動を盛り上げてください。

(文 / 小泉信彦)

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