医学コラム

中学一年、高校三年での定期麻疹ワクチン

平成19年7月、東葛地区の麻疹流行についての協議会が柏健康福祉センターでもたれました。

平成18年、取手の集団発生以降、平成19年1月から流山でも麻疹の散発が相次ぎ、春には中学校が集団発生の為に休校するにいたりました。その協議の目的は、いかに孤発例を正確に捉えるか,いかに集団発生を防ぐかにありました。医療側からは、成人麻疹をいかに減らすか、診断もれは何処で生ずるか、集団予防接種などの介入手段へ何時ふみきるか、など意見や経験例が出されました。

結局のところ修飾麻疹がある限り、集団発生の予防は難しいとの結論になりました。今年の集団発生校を例にとると、麻疹の診断がついたのは発疹が出た時点、その日に登校を控えさせたのですから、この生徒達は前日まで学校に出ていてバラまいていた訳です。この数例はワクチン接種歴があり、症状が軽微なことから修飾麻疹と考えられます。これでは発生者は学校に来るなという程度のマニュアルでは、伝播を防御できない、つまり患者予備軍のPVF、SVF者が集団にいる限り、集団発生は起きてしまう訳です。そして集団発生を防ぐには、PVF、SVF(※1)者を限りなくゼロにするワクチン接種率を上げる以外に手はない。麻疹ワクチン2回接種率を95%以上に上げる必要があります。

厚労省は既に気が付いていたのでしょう。平成20年4月から、中学一年と高校三年での麻疹ワクチンを定期接種化する(5年間期間限定で)との方針が出されました。流山の昨年度の入学前MR2期接種率は80%でした。これではPVF、SVFがまだ残ります。是非95%以上を達成できるよう、医師会全体としてご協力頂きたいものです。順調にゆけば5年後には小・中・高・大学の学生、生徒間で、麻疹ワクチン未接種者がなくなり、2回接種者がほとんどという時代になります。しかし集団発生0になるには、接種率95%以上は必要です。

※1 PVF:primary vaccine failure、SVF:secondary vaccine failure

(文 / 徳重 愛二郎 「徳重小児科医院」)

Vol.02 体内時計と日内リズム