医療の現場から

Vol.01 新型肺炎(重症急性呼吸器症候群SARS[サーズ])

香港、ハノイなど周辺諸国で発生している新しい感染症として新型肺炎(重症急性呼吸器症候群SARS)が世界中で恐れられ注目されている。世界保健機関(WHO)報告(4月19日現在)では、世界27カ国で発症し患者数3,547人。うち死亡者182人に達したと報道され、今後も増加すると推測している。

SARSは、健常成人に多く発症がみられ潜伏期間は2日~8日。インフルエンザのような症状で38度以上の高熱、痰を伴わない咳、息切れと呼吸困難などがあり、胸部レントゲン写真で肺炎の所見がみられ鑑別が難しい。患者の1~2割が重症化するといわれている。人工呼吸器装置を用いてもさらに重症化して死亡する場合もあり、致命率3~4%といわれている。不安は隠せないが、約90%の患者は1週間ぐらいで回復するといわれ、恐れてはならないと専門家は言及している。

感染経路はまだ解明されていないが、飛沫、体液(鼻汁など)により感染するといわれ、病原体は新種のコロナウイルスと断定されている。治療法は推奨される薬剤はなく保存的治療が中心で、検査方法も特異的なものはない。予防法もワクチンなどはなくN95マスクや花粉症用などのマスクを使用し、手洗い、うがいなどを行い、最近、感染地域からの渡航歴のある人との接触を避けることが望ましい。

SARSがこれだけ騒がれている理由として、(1)感染経路などで不明な点が多い (2)診断法、検査法や有効な治療法がない (3)流行地域が世界的に急速に拡大して多くの患者や死亡者が出ている (4)医療関係者に患者や死亡者が出ている―などが挙げられ、今後の充分な疫学調査の結果に負うところが多く、1日も早い病気の解明が待たれる次第である。相談などは、市内のかかりつけ医や医療機関にお問い合わせください。

(文 / 佐藤憲尚)

Vol.02 基本健康診査