流山市医師会について

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公開講座・講演会

【流山市医師会 市民公開講座】

2015.10.18

地域づくり指標に基づいた健康なまちづくり

近藤 克則 氏 (千葉大学予防医学センター 社会予防医学研究部門)

はじめに


※クリックで拡大表示します

10月18日、第6回流山市・医師会市民公開講座を開催しました。
ご多忙の中ご来場くださった皆様有難うございました。

市内各地でお祭りなどの行事が重なる中を約150名の来場がありました。
恒例の井崎義治市長・横田勝正医師会長の挨拶に続き、今回は2演題の企画でした。

講演内容

「2025年に向けたまちづくりによる介護予防」

流山市介護支援課課長早川仁氏

超高齢化社会を前に、すでに動き始めた介護予防の取り組みについて、短時間で解かりやすく説明していただきました。市町村の大きな負担となりかねない介護予防事業ですが、流山市では各地域の活力を活かして支えあう体制を目指し始めています。
高齢者ふれあいの家が始まり、ながいき体操の普及が進んでいます。また、元気な方の参加が不可欠のため、市の養成研修を受講していただき、介護予防活動に参加していただくことが計画されています。

「地域づくり指標に基づいた健康なまちづくり~健康格差の『見える化』と対策」

千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門
近藤克則 教授

近藤氏は、1983年千葉大学卒業、東京大学医学部付属病院リハビリテーション部での研修、船橋二和病院リハビリ科科長などの臨床医を経て、1997年日本福祉大学助教授、2000年英国留学の後、2005年「健康格差社会 ― 何が心と健康を蝕むのか」で社会政策学会賞を受賞、日本福祉大学教授、今年4月から千葉大学教授となられ、地元千葉県ということで快く講演を引き受けてくださいました。

人は死亡率が100%である。
一人の健康だけでなく、コミュニティの健康を

まず、「健康格差」に注目したまちづくりがなぜ重要なのか、過去の政策による効果を分析されました。わが国の健康対策は、今まで「健康寿命を延ばすため、生活習慣病の発症予防と重症化予防による生活の質の向上」を目標に、健康診断や健康教育に財源が使われてきました。2000年から10年かけて取り組まれた「健康日本21」の最終評価では、59目標のうち目標達成は10項目のみ、悪化が9項目でした。達成項目は、メタボリックシンドロームの認知度、定期歯科健診受診者。一方悪化していたのは、1日平均歩数男性で開始時8202→終了時7243歩、カルシウム摂取量減少、朝食を食べない人増加、睡眠のためにアルコールや薬を服用する人の増加などの項目でした。

何が健康の決定要因になっているのか指標を見つけよう

近藤氏らのグループは全国31の自治体で2010年から3年間の地域ごとの指標調査を行い、地域ごとの「要介護リスク」や「社会参加状況」を数値化しました。その結果、課題が「見える化」されました。

例えば、前期高齢者の分析で「転びやすさ」8.2~17.8%の2倍の差が地域によってみられることがわかりました。健診の未受診率も26~41%の差があり、高学歴・高収入の住民が多く健診を受診していることから、「予防が必要な人の方が健診を受診していない」実態が明らかになりました。一方で、社会参加が多い町ほど要介護認定の発生リスクが低くなる傾向がみられ、スポーツ参加率が高い地域や公園に近い地域などの社会環境によって健康度が影響されている事実が明らかになりました。
健康診断を受けている人は元々問題が少ない。町ぐるみで健康づくりをするには、体を動かす社会活動に定期的に参加しやすい環境を整備することが重要である。という結論をえました。

予防医学・疫学で証明することがむずかしい

誰もが納得する結論ですが、「疫学」というのは面倒で、本当に因果関係があるかを実証する研究が必要なのだそうです。例えば、「タバコを吸うと肺がんになりやすい」というのは事実ですが、実は「ライターを持っている人は肺がんになりやすい」とも言えます。タバコと肺がんに因果関係はありますが、ライターにはありません。
何が健康に重要で、要介護を予防できるサービス何かを調べるための「疫学調査」を行っています。運動機能低下・認知症・低栄養・鬱・閉じこもり・口腔機能低下などの要因が要介護や自殺に結びついていることがわかってきました。独居高齢者の多い大規模団地ではサロンを月1回呼びかけ、社会参加からネットワークの形成、お互い様のサポート体制を作ることにより、元気な高齢者が元気でいられる傾向が認められているそうです。

地域には特性があり、その町の健康指標は何か・どうしたら成果が出たかを研究

2016年から新たな全国調査が開始されるため、流山市もぜひ参加をとの呼びかけがありました。町ごとの課題が明瞭になり、何年か後に再調査を行うことにより、成果が確認できるメリットがあります。

講演を終えて

今回は、深刻なテーマにもかかわらず、ユーモアを交えてお話しいただきました。
私たちが日常行っている臨床では、その人にとって最も良いことを行うことをこころがけていますが、そこに「疫学」という遠くから俯瞰した視点を加えると、「公園が近くにある」ことが歩くことにつながる。「サロンに行き始める」と交流が広がって、町内会にも参加して防災対策にもなり、孤独死の予防にもなるなど、診察室では考え付かないような広がりを感じました。難しい疫学を解かりやすく話してくださった近藤先生、有難うございました。
聴衆の皆さんは「今日ここに来たような方は社会参加しているのでボケにくいはずです」という励ましをいただきました。ぜひ、次の講座にもご参加ください。

(文責 / 流山市医師会担当理事 戸倉 直実)

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